2022/06/14

あの人の言の葉 古市 敏雄

 海軍大尉 古市 敏雄

 宇佐海軍航空隊
 昭和20年4月6日
 南西諸島沖にて戦死
 香川県高松市出身 23歳


 昭和十九年六月二十五日

 当直室から突然電話がかかって来ました。
 母が来ているとのことでした。
 午後上陸が許されるとすぐ倶楽部に急ぎました。
 が途次、母が路傍で待っていてくれました。
 以心伝心と言いましょうか。
 それともそれとなく感じたのかも知れません。

 軍人になっても、母が恋しいのであります。
 学生時代はそうでもなかったのですが、海軍に入って、特に予備学生になってから痛切に感じます。
 意志が弱いからでしょうか。
 また人の子としての情なのでありましょうか。

 倶楽部に落ち着いて、母と四方山話をしました。
 でも話をするというより、ただ元気な姿を見ていただければ、それで満足なのであります。
 話ぐらいならば、手紙でも用が足せますものね。

 自分には母がある。
 有り難いことだと思いました。

 遠路はるばる逢いに来てくれる母が・・・・・・。